今回は、GLPジャパン・アドバイザーズ株式会社 代表取締役社長 川辻 佑馬氏に業界動向やファンドの特徴に関してインタビュー形式でお話していただきました。
略歴:川辻 佑馬(かわつじ ゆうま)氏
2009年メリルリンチ日本証券株式会社(現: BofA証券株式会社) に入社し、国内・クロスボーダー案件問わず様々な業種のM&Aアドバイザリー業務に従事。2017年グローバル・ロジスティック・プロパティーズ株式会社(現:日本GLP株式会社)に入社し、私募開発ファンドのファンドマネジメント業務を担当。2020年からは投資開発部において物流不動産の用地・物件取得業務に従事。2024年よりGLPジャパン・アドバイザーズ株式会社へ出向し、2024年3月より同社代表取締役社長(現職)、2024年6月よりGLP投資法人執行役員(現職)。
現状のREIT市場は、日米の金融政策の不透明感等から弱含んでいる状況が続いており、TOPIXや日経平均といった株式市場と比較して歴史的に割安感も強い状況が続いていると認識しています。
このギャップの背景には、金融政策の不透明感に加えて、他にも要因があると考えています。1つ目は、東証が進めている事業会社のPBR改革が投資家から好感されていることだと考えています。J-REITでは、導管性要件から利益の90%超を配当することを求められており、投資家への還元性向は事業会社と比べて高い仕組みになっています。そのため、資本効率の更なる改善へのアクションは事業会社と比べると限定的という側面もあります。その中でも、GLP投資法人では他銘柄に先駆けて昨年11月に自己投資口の取得を実施いたしました。自己投資口取得の規模感は先ほど述べた仕組みから事業会社に劣るものの、アナウンスメント効果に加え、資本効率を意識した運営を行っていくということを投資家にしっかりとアピールすることにより、J-REIT市場と株式市場のギャップを解消していくことに繋がると考えています。
2つ目に、J-REITがインフレの局面で本当にDPU(1口当たり分配金)を成長していけるのか投資家から懸念を持たれているということもあると考えています。インフレヘッジとしての不動産という観点からも、内部成長に加え様々な戦略を実行することにより、金利含めたコストインパクトを吸収し、更にDPUを成長していけることを、投資家にしっかりとアピールしていくことも、J-REIT市場の今後の成長に重要だと考えています。
賃貸市況は、足元の全国における物流施設の空室率は7%台と増加傾向にあるものの、内訳をみると空室が出ているのは新規開発物件が中心であり、竣工後1年以上が経過した既存物件については空室率が1.8%と引き続き低い水準を維持しています。その中でGLP投資法人のポートフォリオも99%以上の稼働率を継続しており、賃貸市況は安定した状況です。Eコマースの進展や3PLの拠点拡大が引き続き主要な需要ドライバーとなっており、物流の2024年問題の影響もあいまって、好立地にあり、効率的にオペレーションができる先進的物流施設への需要はますます高まっており、一時的に需給のギャップが生じているものの、既存テナント様から新しい拠点が欲しいなどの声は多く、需要は力強く感じています。
エリア毎にマーケットを見ますと、首都圏における物流施設の空室率は足元9.7%と高い水準になっているものの、供給は2023年に既にピークアウトしており、今年以降空室率は徐々に低下していく見込みです。近畿圏は空室率5.3%と足元の需給バランスは良好です。今後2025年には過去最大となる39.7万坪の供給が予定されているものの、GLPグループにより供給される物件を含め現時点での内定率は高く、主要なエリアについては引き続き需給はタイトな環境が継続しています。また、物価及び労務費の高騰、働き方改革等により建築費がここ数年で30~40%ほど高騰しているため、新規開発物件はその影響もあり高い賃料で募集されており、好立地の物件を中心にこれまで以上にマーケットの賃料が上昇している環境になっています。空室率が下がっていく方向の中、新規物件の賃料上昇が拡大し、既存物件については今後さらなる賃料の成長が期待される環境と考えております。
売買市況においては、日本銀行の金利政策により10年国債利回りは上昇していますが、物流施設のキャップレートは低水準で安定しており、金利先高感の中でも物流不動産への投資家の需要は堅調であり鑑定価格を上回る高価格での取引が継続しています。日本は他国と比較すると相対的に低金利の環境が続く中、円安の追い風もあり、稼働が安定しておりスプレッドも取ることができる日本の物流施設への需要は特に海外投資家を中心に強く、引き続き売買市況の好況が続くと見ております。
どの要因も関係あると思っています。例えば、5月及び6月において外国人投資家はREIT市場全体で売り越しとなっており、これは金利上昇懸念の表れだと思っています。また、表面的に物流不動産市場の空室率が上昇していることも、物流セクターが弱含んでいる要因の一つだと思います。ただ、先ほどご説明した通り、我々が認識している物流不動産市場のファンダメンタルズは堅調です。ファンダメンタルズや物流不動産の取引市場が堅調な一方、投資口価格が弱含んでいる環境においては、自己投資口の取得も投資主価値を向上させる有効な戦略だと思っていますし、我々は物件数も多いので、取引市場が良好な環境でしっかり物件を売却し、売却益を分配金として投資主に還元を行っていくことも有効な戦略だと考えています。
また、資産規模の拡大が求められるフェーズではなく、物流REIT最大級の資産規模に加え、バラエティ豊かな物件を保有していることから、継続的な売却戦略を実行できるというところもGLP投資法人の強みであると考えています。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
1 | アドバンス・ロジ | +2.39% |
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2 | コンフォリア・レジ | +0.64% |
3 | NTT都市開発リート | +0.09% |
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