2006年06月26日

オリックス・ショックについて/REITアナリスト 山崎成人


6月16日に公表されたオリックス不動産投資法人とその資産運用会社であるオリックス・アセットマネジメント(株)への行政処分勧告によって週明けからのJREIT市場が大きく揺れました。

全銘柄の株価が下落する中で、株価上位銘柄の下げ幅が大きくなったことも市場の動揺を誘ったようです。

4月の日本リテールファンド投資法人への行政処分の時と比べても、エクイティ市場への影響が大きかったのは、処分勧告の内容にあると思われます。

資産運用会社への処分勧告は5項目ありますが、その中でも、違法建築物の取得が最も重大な違反だと言えます。

JREITが違法建築物を取得することはないという事はコモンセンスだと思われていましたので、その常識を覆すような違反が発覚し、JREIT保有資産全体への不信感が募ったようです。

詳細は不明ながら、今回の処分対象となった物件は何れもオリックス不動産投資法人上場時の組成資産のようで、私も上場時の評価書では、今回の処分対象になった鑑定評価や不動産デュー・デリジェンス調査の精度に言及しています。

オリックス不動産投資法人は上場後に体制を大幅に変更し、新たな体制と戦略で再構築を図りましたので、上場時の問題のいくらかは解消されているはずですが、それでも、今日まで違法建築を見逃したのは重大なミスです。

JREITは不動産投資運用のプロと見なされていますし、物件取得に際しては専門家による調査が行われ、更に、取得後はPM業者というプロが資産管理運営をしていますので、これだけの専門家が絡みながら違法建築という初歩的なミスを見逃したのは、資産運用体制全体に対して不信感を持たれても当然です。

私自身もオリックスの資産運用の責任者から法令遵守については厳密に対処しているという事を何度も聞きましたので、今回のようなケースが発覚したのは意外と感じました。

現段階の銘柄側の発表では、事の経緯と詳細が分かりませんが、これだけ市場に大きな影響を与えた責任を考えれば、A4版2頁程度の情報開示では不十分です。

何故、このような事が起きて、そして今日まで見過ごしてしまったのかを投資家及び市場に詳細に報告することは最低の義務と責任だとも言えます。

又、私の見る所では上場時から深く関与しているオリジネーターの考え方に振幅があった事も遠因になっていると思いますので、これだけ市場に動揺を与えた責任をオリジネーターであるオリックス㈱も感じて欲しいと思います。

不動産は細密で多くの規制が存在する為、プロでも完璧を期すのは大変ですのでミスは起こりえますが、問題としたいのは、事後の処理です。

詳細に経緯を開示し、何が問題であったのかを明らかにして、今後に生かすという真摯な姿勢を示す事がJREIT全体に対する義務であり、そして、支持してくれた投資家に対しての償いだとも言えますので、少なくともこれだけで説明が終るという事はないものと理解したいと思っています。

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