2007年03月23日

J-REITのリスクとキャピタルゲイン投資/REITアナリスト 山崎成人


 昨年の秋以降からマスコミでJREIT特集を組むことが多くなっているようで、私への取材も多くなっています。以前はせいぜい年1~2回程度、それも話題の少ない2月と8月に取り上げる程度でしたが、JREIT市場の拡大と伸張により各マスコミに頻繁に登場するようになりました。
これら取材の中で最も多い質問を挙げると、
① これからのJREIT市場の可能性と投資リスク
② 各銘柄の評価と投資ポイント
になりますが、この事は投資家にとっても大変興味がある項目ですから、取材もこれに集中します。

先日も、あるセミナーで出席者の投資家の方から、 「将来、JREITが不調に陥ったときには現在の株価からどの程度下がると考えておけば良いのか?」 という質問を受けました。
元々、JREITは株式とは違って投資口価格が0円になることはありませんが、リ スクの上限をどの程度に見積もっておけば良いのかは明確ではありません。 一応、理論的には純資産価値程度と言うのが一つの答えですが、純資産価値算定の基と なっている不動産鑑定価格には誤差とタイムラグがありますから、現実的には、最悪でも純資産価値の70%程度というのが目安だと考えられます。
尤も、不動産バブルの崩壊や古くはオイルショック等の非常事態が起これば、更に不動産価値は下落しますが、このような非常事態下では不動産の流動性が極端に低下しますから、買い手が現れるまで価格を下げるしかありません。
かつてのオイルショック時に、保有している不動産の売却に動いたことがありますが、この時は取得価格の3割まで下げてようやく買い手が付きました。 バブル崩壊後も抵当権を付けていた金融機関は債権の30%程度が回収されるケースが多かったですので、経験的に見て元値の30%というのは不動産価値の下限だとも言えなくはありません。
それならJREITも最悪は30%程度の株価というのもあり得るという事になりますが、JREITの保有しているのは全て現に収益を生じている不動産だけですから、収益の生じていない土地(更地)の例で考えるのは早計です。 仮に、JREITの全保有物件のポートフォリオNOI(対取得価格)を5%だと推定すると、取得価格の50%減になれば、NOIは10%まで上昇します。
年間10%もの収益率が見込まれるならば、充分に買い手が存在しますから、価値が半減する可能性はなさそうです。
前述の投資家の方は「3分の1まで下がる可能性がありますか?」との質問でしたので、 即座に、「それはありません」と答えましたら、安心した様子でした。

この事から、JREIT投資の一つとして、キャピタルゲイン狙いの長期投資というのもあり得るのではないかと思い付きました。 100万円/口以下の銘柄の中から、ブランド力は劣るが、内容がしっかりしている銘柄を選び、キャピタルゲインを狙ってみるという投資です。
仮に目論見が外れたら、そのまま塩漬けにして配当金だけを受け取って数年過ごせば、 株価は買ったときの価格に戻っている可能性が高いですので、面白い投資だと言えます。
但し、この手法は個人投資家限定だとも言えます。 プロの投資家は一定期間内のパフォーマンスで評価されますから、このような悠長な投資は出来ません。 個人であれば、自分だけのリスクですから、臨機応変に投資態様を変えられます。もしキャピタルゲインが失敗すれば長期投資に切り替えるだけでリスクが軽減しますので、 有力な投資手法だと言えます。
元々、JREITは個人投資家を主たる対象とした投資商品ですので、最近の大口投資家の動向によって作られた相場に振り回されずに、個人の特徴を生かした投資手法で望めば充分に成算のある投資ではないかと思います。

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