2007年07月25日

不動産鑑定の監視強化/池島 麻美


 前々から言われておりました、国土交通省による、不動産時価を決める基準となる「不動産鑑定の強化」が始まります。6月20日の国土審議会の小委員会で詳細は検討に入るということです。
REITや私募ファンドなど不動産の証券化市場は拡大し、2006年度末で33兆円とまで成長しており、それに伴い不動産投資市場に参加する一般投資家も増加しているわけです。
商品の情報開示を知らされるまま損失を受けた一般投資家もおり、金融庁の処分を受けた運用会社もあるので遅すぎるのでは思うところはあります。
今回、国土交通省も金融庁とともに監視機能を高めていくということです。
内容は以下にまとめております。

1.情報開示の強化
鑑定評価報告書の記載の充実とともに、7月から不動産鑑定基準の改定が行われます。新基準においては、鑑定評価項目を統一し鑑定士の恣意性を排除して比較しやすくします。
今は賃料収入や維持管理費は収益・費用項目について明確な定義がなく、鑑定士によって評価手法も異なり、利回り比較がしにくいというのが現状です。
しかし、今後は、土地の開発による賃貸収入から維持管理費など差し引いた利益も明確にし、鑑定の根拠となる収益見積もりなどの情報開示も義務付けられているのです。

2.不適切な評価が発覚した場合
現在は2005年夏に公表されました「処分の考え方」に基づき処分するということです。
この基準もあいまいという声もあり、今後は今までになかった鑑定士の業務停止や登録取り消しなど積極的に出てくるものと思われます。
それに加えて鑑定士が新基準に基づく鑑定を適切に行っているかどうかは、第3者機関が導入されます。
この第3者機関は学識経験者や法律、不動産取引専門家により構成されており、不動産鑑定協会や国土交通省に、情報の提供や悪質な鑑定を改善するための権限を持つことになります。

今回の不動産鑑定の「監視強化」がなされるということは、これまでの不動産鑑定には恣意的ものがあるのだろうと思わざるをえません。
しかし、このように情報開示を徹底することにより市場の透明性を高めるということは、投資家保護に繋がり、そして一般投資家が自己責任で参加できる市場であれば、更なる不動産投資市場の拡大にも繋がるのです。
そのため国土交通省の規制強化は、今後の不動産投資市場の行く末を大きく変えるものとなるのではないでしょうか。

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