2007年09月10日

年金資金と不動産②/池島 麻美


 <a href="../column2/00034_member.html">前回のコラム</a>で、不動産市場と年金資金を結びつけることは、高齢化社会に対応する為にも不動産投資市場の発展の為にも、とても重要なことだと紹介させていただきました。
しかし現状は、個人資金は預貯金が一番多く、不動産市場と年金資金の動きは、かなり限定的です。
この現状において、様々な問題を抱えております。
今回はこれらの諸問題についてご紹介させていただきます。


そもそも個人資金において、まだまだ不動産ファンドやJ-REITの認知度が低すぎるため、まずは一般投資家向けの説明やわかりやすい透明な市場を求められるという前提があります。
それから、日本ではベンチマークとなる不動産投資インデックスがありません。年金においては厳しい受託責任が求められるため、結果説明だけでは不十分であり、同じ不動産というアセットの中でのランクを知るためにもベンチマークが必要なのです。
また、年金運用者が不動産投資を一任する運用会社の法的な問題もあります。
年金運用者は少人数で多額の資金を的確に運用することが求められており、ポートフォリオのアセット毎に専門の運用会社に一任することが必要となるのです。
しかし、現状では年金を安心して一任できる仕組みがないため、年金運用者が投資運用を一任できるような法制度の改善をする必要があります。

他にも税制上の問題もあります。

・TMK等、借入れ先の要件の改善
現在、TMK等が税制上の導管性用件を満たすには、資金の借入れ先を「適格機関投資家」に限定しています。
よって、現行では、適格機関投資家に位置づけられない年金基金については、不動産ファンドのデッドやCMBSへ、資金提供できない状況なのです。

・匿名組合契約に係る源泉徴収制度の問題
事業者は10名以上の匿名組合と締結している匿名組合契約に基づく利益の分配については、所得税が源泉徴収されます。
しかし、年金基金は税務上非課税扱いとなっており、確定申告も出来ず還付もありません。契約者が10名以上になってしまうと、年金は源泉徴収分所得税を余分に払わなければいけなくなります。
よって10名未満のファンドしか組成できず、不動産投資は受け入れにくくなってしまうのです。(但し、平成19年度税制改正により、平成20年1月より匿名組合契約に係わる源泉徴収の人数要件が撤廃となります)

・減価償却の享受の問題
個人年金が実物不動産へ投資するメリットの一つに減価償却の享受があります。
実物不動産への投資が他の金融資産と違うところが減価償却分を享受できることです。配当と元本の繰上げ返済を同時に受けることが出来るのです。
つまり、不動産証券化においても、減価償却分を投資家に戻す(出資戻し)ができれば、実物不動産と同様のメリットが残ります。
このように減価償却分が還元されると、不動産ファンドやJ-REITなど不動産投資商品が、他の金融商品より優れている部分としてアピールできるのではないかとも言われております。
それにより個人投資家への認知度や年金資金の流入にも繋がるものと思われます。

 確実に少子高齢化社会は加速しております。これらの課題を解決し、この資源を生かして少子高齢化社会も突破できる方法もあるはずです。
今後は少子高齢化社会への対応と不動産市場の発展のためにも不動産市場と年金資金の結びつきはこれから更に重要視され発展していくことを期待します。

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