2009年11月13日

増資と物件取得/REITアナリスト 山崎成人


 日本アコモデーションファンド投資法人(NAF)とケネディクス不動産投資法人(KRI)の増資が行われましたが、この両者の狙いは異なっているようです。

NAFは、資産規模拡大による投資口流動性の向上と、この市場環境の中で増資を成功させる事で金融機関の信頼を得て、資金調達環境を改善することが主たる目的だと考えられます。
増資価格は487,910円/口と上場時公募価格580,000円/口の約16%ダウンにはなりましたが、基準価格(計算上の額面価格)に近い価格なので、エクイティ構造への傷は避けられそうです。
又、投資口簿価の537,752円/口に対しては、約12%ダウンとなり若干の希薄化はありますが、増資時の物件取得によって埋め合わせ出来る範囲だと思われます。
今回の増資については、資産運用会社とスポンサーである三井不動産が何よりも増資の成功を目的として取り組んだようで、投資法人に売り渡す物件の利回りにも配慮が窺えます。
こういう時期に、スポンサーがしっかりとした売却利益を得られるような価格で物件を売り渡せば、REIT投資家に対する利益相反だと非難されますから、従来から、こういう批判に対して気を配っている三井不動産の節度が感じられます。

次に、KRIの狙いを考えてみると、こちらはNAFとはやや違います。
今回(第3回)の増資価格 252,200円
払込価格 243,100円
投資口簿価 624,869円
過去最高増資価格(第2回) 873,180円

増資時に取得する物件も、4物件で88.1億円(NAFは18物件で約426億円)と比較的小規模ですから、資産規模拡大とは言えません。
又、増資価格から見て希薄化も進行しますから、この増資は、兎に角エクイティを調達出来るという事を立証するのが目的のようです。
従って、見方としてはこの増資後に何をするのかが注目です。
KRIはこの増資によって若干の時間稼ぎは出来ましたが、これで懸案が解決された訳でもないので、この後にどういう展開をするのかがポイントになりそうです。

更に、この2社以外にも年内増資を行う投資法人がありそうですが、気になるのはその目的です。
こういう不動産環境で、スポンサーにかなりの利益をもたらすような物件売買を行う目的で増資を敢行するような投資法人が現れるかもしれません。
仮に、そのような増資が行われると、REIT全体が回復に向かって動いている状況に水を差しますし、政策的に支援している行政も動けなくなります。
それでも、親会社の事情優先で、時局を無視して敢行すれば、REIT及び不動産状況に大きな被害を与える恐れもありますから、そんな無節操な投資法人の増資が敢行されないことを切に願うばかりです。

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