2010年11月19日

REITの再構築/REITアナリスト 山崎成人

 今年春以降のREITの決算を見ると、パフォーマンスが低下している銘柄が多くなっています。
その最大の理由は、賃貸市場の低迷による賃料と稼働率の低下で、更にテナント異動が増えたことによるフリーレントの発生等が挙げられます。
その為、どの投資法人も賃貸市場の回復待ちという状態ですが、果たしてそれがREITの姿として相応しいのかは疑問です。
REITは不動産会社とは異なった特徴を有している主体ですし、その為不動産市場の見方も自ずと異なるのが本来の姿ではないかと思います。
不動産業界と同じ見方で市場を見て、同じような運用をすることがREITではないはずです。

それでは、具体的にどのような考え方が必要なのかですが、私の見るところでは、発想を根本から変える必要がありそうです。
市場の動向次第だと言うならば、それは株式と何ら変わりませんし、ミドルリスク・ミドルリターンでもありません。
元々、不動産は景気動向に対して一定のスタビライザー効果があると考えられていましたが、現在の状況は、必ずしもそれを裏付けてはいません。これでは投資家の関心はより薄れていきますし、長期投資のメリットも感じられません。
このような現状を打破するには、運用の根本から見直し、長期ビジョンを持ったシナリオを構築し、それを達成するような運用方針に改める必要があります。
REITの再構築の出発には、先ず、不動産市場の見方を変えることから始まり、REITの目的を本来の形に収斂させるような、ポートフォリオに変えていくこと、そして、それらをREITが理解し推進するのであれば、制度的な後押しも必要となります。
そして、それらが上手く調和すれば、REITはもっと優れた投資商品になりますし、マクロ経済に対する貢献も大きくなります。
残念ながら、このコラムでこれ以上具体的にお話しするにはテーマが大き過ぎますが、既に内容は固まっていますので、セミナー等の機会に詳しくお話ししたいと考えています。

ピンチはチャンスの芽だとも言いますが、REITはまさにその状態にあると言えます。
チャンスを生かしREITが健全な状態に近づいた時に、様々な手法を新たに導入すれば、REITの基盤はもっと強くなります。
10年目に入ったREITは、そろそろステップアップの時期ですので、もう一段上のレベルを目指して欲しいと思っています。


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