2015年02月10日

J-REIT価格の現状と再上昇するための条件/アイビー総研 関 大介

 足元のJ-REIT価格は、落ち着きを取り戻したようです。東証REIT指数は、1月20日の1,978.56ポイントから2月3日には1,812.59ポイントまで8%を超える下落となりましたが、2月4日には僅かながら反転し1,829.81ポイントとなりました。
1月下旬以降の下落要因となっていた長期金利(10年国債利回り)は、1月19日の0.200%から2月4日に0.375%まで上昇を続けています。つまり長期金利の上昇によるJ-REITの下落局面は一時的ですが、収束に入ったと考えられます。この背景には、外国人投資家の売却が一巡したこともありそうです。外国人投資家は、日銀の追加金融緩和後となる11月に14年最大となる500億円を超える買越しを行ったことが示す通り、日銀の金融政策に対応した売買動向を示します。日銀が1月21日に公表した金融政策決定会合の内容は、外国人投資家にとって「売り」材料となった可能性が指摘できるのです。

日銀の第3弾となる金融緩和が遠のく中で、J-REIT価格が改めて上昇に転じるための条件として次の2点が両立することが必要だと考えられます。
一つ目の条件は、長期金利の乱高下状態が続くことです。長期金利が常に上昇リスクに晒されることで、金融機関は債券投資を行いにくい状況となります。金利水準が落ち着くまでは、代替投資先としてJ-REITへの投資が拡大する可能性が高まるのです。
二つ目の条件は、米国の金利引き上げ時期が遅くなることです。日銀の第3弾となる金融緩和が当面期待できないことや欧州が金融緩和に踏み込んだことで、円安要因は米国の金利引き上げだけとなっています。紛争などの地政学的リスクもある状況ですので、為替市場は円高に転じやすい状況とも言えます。このように円高リスクが高まる状況となれば、投資資金が海外流出することや輸出企業を中心した国内株式に向かうことが少なくなります。つまり、為替市場が円安傾向を示さないことでJ-REITが投資資金の一時的な避難先として注目されると考えられるのです。

このように2つの条件が揃えば、J-REITは消去法的に投資家の関心が高まる可能性があります。また日銀の第3弾となる金融緩和が当面実現しないことは現状の価格にはマイナスとなっていますが、1口当たり分配金などのファンダメンタルズにはプラスとなることも想定されます。国内景気は、原油安だけでなく円安によるコストアップインフレの影響が弱くなり早期の回復に転じる可能性があるためです。景気回復の足取りが速くなれば、オフィスビル系銘柄の分配金増加時期が早まるというメリットがあるのです。

但し、2014年に2,200億円を超える買越しを行ないJ-REIT最大の買い手となった金融機関は3月の決算期前となっているため、大幅な買越しは期待できないと考えるべきでしょう。むしろ、金融機関は現状の価格水準でも利益確定のためにJ-REITを売却することが可能な状態です。前述の通り、消去法的にJ-REIT価格が反転する可能性もありますが、3月までは一時的に軟調になる局面がありそうです。

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