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2017年04月28日

【後編】第7回「不動産投資市場政策懇談会」

2017年4月27日 国土交通省開催

3つ目のトピックはリート市場の改革です。
国土交通省側は、J-REIT組込物件の多様性を今後とも拡大していくことが必要との認識を示し、具体的なフロンティアとして学校、病院、インフラ、国や地方公共団体が保有する公的不動産を挙げました。
また委員側からは「今後20~30年の日本不動産市場は、オペレーショナルアセットとシェアリングエコノミーの組合せで大きく変わっていくのではないか」との見方も示されました。
リート制度で日本に先行している米国では既に公的不動産を主要投資対象とするガバメントリートと呼ばれる存在があり、大学のキャンパスをポートフォリオに組み込んだリートも見られます。この他にも森林やカジノ等様々な不動産を組み込んだ多様なリートの存在が、異なるリスク・リターン観を持つ多くの投資家を引き付け、不動産市場の活況と安定を実現しています。日本でもJ-REIT保有資産の多様化は着実に進んできたところであり、それを更に加速させるために行政サイドからの規制や税制といった面での支援が期待されます。

当日最後に取り上げられたのは、不動産投資家の投資環境改善です。
その中でも、投資家の判断に欠かせない指標を如何に整備していくのかという点に関して、委員側からは「現在のインデックスではリノベーションの効果を適切に反映させるものがない。このため、投資家がバリューアッド型(注1)の戦略をとりにくくなり、不動産投資市場がコア型(注2)の投資戦略一色となっている。これは運用人材の育成、そして様々なリスク・リターン観を持つ内外の投資家を引き付けるという面からもよろしくない」という声が挙がりました。
対して国土交通省側からは、IMFの商業用不動産価格指数に係る国際指針では、売買価格のみならず空室率や賃料水準等多角的な分析が各国に求められる見込みであることが紹介され、環境性能やリノベーションの効果を指数に織り込んでいくことに前向きな姿勢が示されました。
単純な売買価格のみならず、重点の置き方の異なる複数の指標で不動産投資の妥当性が測定できるようになれば、比較的短期の運用を目指すオポチュニスティック型(注3)から長期運用のコア型、そして両者の中間に位置するバリューアッド型と異なるスタイルの運用業者が共存することが可能になり、様々な投資期間、リスク選好を持つ内外の投資家の需要にもよりきめ細かく応じられるようにもなります。

今回の「不動産投資市場政策懇談会」で取り上げられた指数の整備・拡充、リート市場の改善、企業不動産の有効利用、不動産特定事業法の一部改正が、不動産投資市場における多様な運用スタイルの共存と運用業者の層の拡大、内外の投資資金の流入、不動産投資市場の更なる活性化という好循環を果たして創り出し加速させていけるか、「2020年頃までにリート等の資産総額を約30兆円に倍増する」という政府目標の実現を大きく左右しそうです。

注1.バリューアッド型:投資収益を賃料収入の他、割安に取得した物件をリノベーションして価値を高めた後に売却することで稼ぎ出す投資戦略。
注2.コア型:投資収益を継続的に保有する物件からの賃料収入で稼ぎ出す投資戦略。
注3.オポチュニスティック型:投資収益を市場、景気分析に基づく比較的短期の物件売買で稼ぎ出す投資戦略。

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