2008年06月16日

上場中止について/REITアナリスト 山崎成人


 大和ハウスリート投資法人がブックビルディングの不調によって上場中止になりました。
昨年12月にはジェイリート投資法人とエイブルリート投資法人が同様に上昇中止をしていますから、これで続けて3銘柄がブックビルディングによって上場中止に追い込まれました。
特に、今回の大和ハウスリート投資法人は、内容も決して悪くはなく、引受証券会社にも野村證券・日興シティグループ証券・大和証券SMBC・みずほ証券等の国内大手証券会社が揃い踏みしていましたので、これで上場中止になったことは少なからず関係者にショックを与えたと思います。
機関投資家の見送りが多かったとの事のようですが、大口投資家が証券会社の勧誘には乗らなくなった事を示す例でもあり、これは決して悪い訳ではありません。
元々、JREITに関しての証券会社の姿勢は手数料稼ぎが先行していて、JREITという商品に合わせた営業が出来ていませんでしたから、市場が厳しくなれば、投資家を説得するだけの材料がありません。
また、現在の市場株価を見ると、42銘柄中23銘柄が公募価格割れを起こしていて過半数の銘柄が低迷していますから、この先の株価推移も悲観的な見方になります。
こういう状況でありながら、投資家にJREITを勧めるにはそれなりの材料を提供した上になりますが、証券会社は有力な材料を持っていないようです。

一方、6月16日から東証で東証REIT指数による先物取引が始まります。 大口投資家は先物でヘッジ取引をしておけば、マイナス分を止められますから、これで多少投資が活発化することを期待したい所ですが、直ぐには効果が表われないかもしれません。

平成20年度の税制改正によるJREITの導管性要件の緩和に続いて、大証のJREITオプション取引の開始、そして東証の先物取引開始とJREIT支援とも言える施策が活発化していますが今の所は効果がありません。
それは、JREITにとって緊喫の課題がデッドファイナンスにある事に因ります。
株価が低いために増資が行えず、借入金の元本返済が出来ないという事で金融機関の融資姿勢が慎重になり、それがリファイナンスリスクとして、又、株価を下げるという悪循環に陥っています。
JREITは、このような悪循環に入るか、増資とデッド調達の好循環に入るかの二択になりますので、結果として二極化が進行します。
これはJREITの宿命とも言える点ですので、常日頃から資産運用方法を磨き、情報開示を徹底し、JREITという商品の普及活動を行うという、至極当たり前の事を 着実に展開するしか対策はありません。
不調の時に逆転の秘策というものはないので、好調時に充分な対策を展開する事で不調を乗り切るのが唯一の方法ですが、今の株価を見ていると、低迷銘柄の中には今までの対応の甘さが目立つ銘柄もかなりあると言えるのです。
 

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