2010年03月25日

2009年のJ-REIT市場を振り返って(その2)/関 大介


<a href="../column2/00102_member.html">(→その1)</a>


2. 合併を導いた制度改正

 このような状況の中で、J-REIT市場の建て直しの策の一つ目は、不動産市場安定化ファンド(官民ファンド)の創設への動きとなりました。
J-REITは、借換えだけでなく一般企業の社債にあたる投資法人債の償還という問題を抱えていました。
投資法人債は償還時に再発行できる環境にはなく、さらにその分を金融機関からの融資で凌ぐことも困難だと考えられていたためです。
 不動産市場安定化ファンド創設によって、国交省や金融庁を中心とした政府が迅速に実現に動きJ-REIT市場をケアしているというアナウンスメント効果は大きく、ファンド設立の報道があった09年3月以降は、それまで大幅に売り込まれていた銘柄の価格回復の要因になりました。
 二つ目は、合併制度の急速な整備です。合併を進めるに当たり実務面で障害になる可能性がある点を08年12月から09年4月迄の僅か半年以内に一気に実現しました。特に障害と考えられていた事項は次の2点です。

(1)「負ののれん」の償却益を配当可能額から除外

合併に伴い被合併銘柄の資産を簿価より低い価格で取得する場合、その差額部分が「負ののれん」として合併差益になります。
一方でJ-REITは利益の90%以上を配当することで導管性を維持できることになっています。
つまり従来は差益部分も配当が必要でしたが、制度改正により除外することが明確化されました。

(2)合併交付金の明確化

合併比率次第で、被合併銘柄の投資家は1口未満の投資主となる可能性があり、また被合併銘柄は消滅法人となるため合併前利益の配当ができませんでした。
事業会社ではこのような処理を合併交付金で行うこととされていますが、J-REITが準拠する投信法上はこの規定が明確化されていませんでした。
この点が明文化されたことによりJ-REITでも合併交付金での処理が可能となりました。


3. 合併の効果と問題点

 このような合併制度の整備でアドバンス・レジデンス投資法人(ADR)と日本レジデンシャル投資法人(NRIC)との第1号合併公表を皮切りに、合併報道が断続的に市場を駆け巡ることとなりました。
また合併以外にも、スポンサーの破綻に伴い新スポンサーの選定に入っている投資法人が被合併銘柄となる可能性も高い状況です。

 このように合併発表が続く要因は、合併銘柄の再成長への布石となるためです。
合併は、被合併銘柄の資産を「負ののれん」の金額分低い価格で取得することと同じ効果を持つので、合併後のポートフォリオ利回りが上昇することになります。
特に被合併銘柄の資産規模が合併銘柄より大きい程、分配金の増加余地が大きいのです。
分配金増加に伴い合併後の銘柄の価格が上昇すれば、増資余地が広がり再成長が可能となるのです。
 また合併差益を利用してポートフォリオの再構築も可能になります。
合併差益と物件売却損を組み合わせることにより分配金の安定性を保つことが可能になるためです。
 さらに合併差益は利益剰余金としてバランスシートに残りますので、減価償却費相当額を配当することで、分配金の安定性を高める可能性もあるのです。
このように合併のメリットは、合併後の運営の選択肢が豊富になる点と言えるでしょう。

 一方でJ-REITの合併における問題点も見え始めています。最大の問題点は、合併比率によって発生した端数投資主の存在です。
上述の通り、合併投資法人は、端数投資主に対しては合併交付金を支払えば合併後の投資主から事実上排除することになります。
これを端数投資主から見れば、実質的には非上場化されたのと同じ効果(※1)となってしまうという問題があるのです。
 但し、合併では、極力端数投資主への配慮が示されています。
例えばADRとNRICの合併は新設方式を利用して、それぞれ保有1口に対して旧ADR投資家は3口、旧NRIC投資家は2口を割当てして端数投資主が発生することを回避しているのです。

※1:非上場化されても分配金受取りの権利は残るので、非上場化に伴い投資口の統合が行わない限り、合併の方が投資家の排除(スクイーズアウト)に繋がるという問題があります。

<a href="../column2/00107_member.html">(→その3へ続く)</a>

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