2010年12月03日

個人向け投資法人債について/REITアナリスト 山崎成人

 ユナイテッド・アーバン投資法人より、REIT初となる個人向け投資法人債の発行が発表されました。
従来の投資法人債は払込単位が1億円でしたが、今回のユナイテッド・アーバン投資法人第4回投資法人債は100万円になっていて、個人投資家にも手が出る金額になっています。
その上、償還期間3年で金利は1.38%となっていますので、預金金利の現行水準と比較すると、1%程度の上乗せになっています。
同様に今年の償還3年の投資法人債の発行履歴(機関投資家向)を見ると、
プレミア投資法人第3回投資法人債(8月発行)700億円 0.97%
グローバル・ワン不動産投資法人第3回投資法人債(9月発行)1,000億円 1.07%
となっていて、今回の投資法人債の利回りは投資家に有利に設定されています。
個人にとって、定期預金では0.35%程度の利回りしか得られませんので、確定利回りである投資法人債の1.38%は魅力的に映るはずです。
投資法人債はデットですからエクイティより優先債権になりますので、投資リスクは小さくなり、償還原資だけをチェックすれば良いと言えます。
また今回の調達は150億円ですから、3年後に金融機関からの借入に借り換えるか、又は、再度投資法人債を発行するか、それとも日本政策銀行からの借入で賄うかになりますので、償還についての懸念も小さくなっています。
尤も、投資法人としては今回の投資法人債で先鞭を付けて、今後も再発行しつつ、 将来的には転換社債発行への道を開きたいと考えているかもしれません。
本来、REITにとって資金調達手段の多様化は財務の安定性をもたらしますし、成長戦略の担保にもなります。
また、投資家の為の仕組みであるREITがデットも投資市場からの直接金融に頼るのも理屈にあいますから、今回を機に個人向け投資法人債発行が他銘柄にも波及するのが望ましいです。
個人にとって、元本リスクゼロの定期預金では、0.5%の金利すら得られない現状ですから、ローリスクでもう少し高い利回りを欲しいと考えるのも当然なので、このような個人ニーズに対応していくのはREITの本来の姿だと言えます。
この意味でも、個人投資家向け投資法人債の発行が活発化して、更には、転換社債発行の道が開かれるようになれば、REITにとって大きな意味があると言えます。

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