2011年11月11日

オリンパスの件/REITアナリスト 山崎成人

 オリンパスの損失隠しが発覚し、株式市場が動揺しています。20年前の営業外収支の損失をそのまま隠していたようですが、当時はバブルの頃でしたから、他の多くの企業も同様の損失を抱えていました。私がかつて在籍していた会社も財テクによる巨額損失を抱えていましたが、社内に発表し早期に処理したことを覚えています。
財務運用によって営業外損失を蒙る例は、バブル以前にも何度かありましたので、1980年代に在籍していた会社では、財務運用は保守的、且つ、慎重にというのが私の考え方で、当時社内に財テク機運が盛り上がりましたが、その火消側に回っていました。
この考え方は今も変わっておらず、REITの分析でもこの見方に沿ったチェックをしています。
元々財務分析を習得したのも、財務運用をどうすべきかを合理的に考え社内を説得するツールとしたかったこともあります。当時財務分析をする人は少なかったこともあって、数字を挙げて説明すると反論出来る人がおらず、渋々了承していた感があります。
そんな事でREITをウォッチする仕事を始めた時も、財務分析を重視していましたが、トラックレコードが蓄積するまでは活用出来ませんので、上場が42銘柄になった時から開始しました。今は全銘柄の上場当初からの分析データを保有していますから、REITに限ってオリンパスのような例は出てこないだろうと思います。
財務データを時系列で見ていれば、何かあれば数値の歪みや非連続性として表れますから早期に把握出来ます。 オリンパスの例でも監査法人が把握出来なかったのかとも言われていますが、当時の監査自体今程厳密ではありませんし、実態は監査ではなかったように思いますので、把握するには当時にかなり拘る人が担当するしかなかったと思います。また仮に把握したとしてもそれを正面切って指摘するのは憚れたと思います。
今日のREITの監査は一般企業のそれよりは易しいですが、経営方針にまで踏み込むのは限度がありますので、やはり客観的な立場でのウォッチが必要となります。
こういう不祥事を最小限に食い止めるには、利害関係の薄い客観的立場でのウォッチが不可欠ですが、日本の現状にはこういう仕組みがビルトインされていませんから、一般企業の問題は根本的には解決されません。 従って、社会がこういう問題に真剣に取り組むようになるのまで待つしかないのだと思います。

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