J-REITの多様化/REITアナリスト 山崎 成人
JREITも40銘柄を超えましたし、また、オーストラリアにもJREITのファンド・オブ・ファンズが数本設定されているとの由、それに加えて、シンガポール、台湾、香港のREITも活況を呈しているようで、日本の不動産もこれらの動きの中で変化していくのではないかと思われます。
既にオーストラリアREITが日本の不動産を組み込み始めましたし、成長するアジアのREITが海外投資を始めるのも時間の問題だと考えられます。 アジアで不動産投資を分散させるとしたら、カントリーリスクが相対的に小さい日本の不動産は不可欠ですし、不動産市場の大きさによる流動性の高さからも真っ先に注目されるはずです。
こうなると、日本の不動産の買い手が更に増えて、価格高騰に繋がる可能性もありますし、異なった見方で買い進む主体もありそうです。
未だ低金利下の日本では、レバレッジを働かせれば、5%程度の利回りは確保されるでしょうから、海外REITにとって勝負可能と映るのかもしれません。
一方、JREITは保有不動産の質と利回りを求められていて、安易に買い進む事が出来ませんので、海外REITと競合するとやや不利になるかもしれません。 JREITにとって、アジアの不動産に投資を分散する積極的な理由はありませんので、日本の不動産市場での攻防が専らになります。従って、地元の利と不動産に対する長期的な視点で優れた判断をすることで優位性を保つしかありません。
然しながら、一方で、アジアンREITと同じ目線で動く銘柄も登場しそうですので、JREITも多様化していく方向にあると考えられます。
日本ビルファンド投資法人を筆頭とした上位銘柄群には大きな変化はなさそうですが、海外REITとの競合も視野に入れれば、質の高い不動産の確保には、今から積極的に動くことになるかもしれません。 海外REITが日本の不動産市場に参加する環境下では、JREITの資産運用も多様化するでしょうし、成長戦略の選択肢も増えそうですが、その分資産運用がより難しくなります。日本の不動産の先行きを考えると、資産運用会社も頭が痛いという事にもなりかねません。
尤も、このような状況がはっきりするのはもう少し先になるでしょうから、今はそこまで考えずに動く銘柄も多いと思いますが、レジテンス系銘柄は悠長に構えていてはいけません。
海外REITの攻勢も視野に入れながら、自分たちの特徴と優位性をどのように確保していくのかを真剣に考える時期です。
そのためには、建物のハード面にも工夫が必要ですし、賃貸というソフトにも改良を加える必要があります。 グローバルな戦いにも勝ち抜くという覚悟を以って、今から革新的な取り組みにチャレンジする銘柄を期待したいところです。
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