2009年01月09日

個人投資家の動向/REITアナリスト 山崎成人


 東証が発表する投資部門別売買動向を定期的にチェックしていますが、2008年の売買動向を見ると、REIT創設以来の状況になっています。
それは年間(1月~11月の合計)を通して個人投資家が大幅な買い越しになったことですが、月別に見ると、2・8・9月が売り越しで、それ以外は買い越しになっています。
逆に、個人以外の投資家全てが売り越しになっていますから、今やREIT市場は個人投資家が支えている状態だとも言えます。

過去一貫して売り越し主体であった個人投資家が買い越しに転じたのは、投資口価格の下落により利回りが大きく上昇したことと、将来の反転期待による投資行動だと考えられます。
個人には有価証券投資の減損処理はありませんから、例え一時的に価格が下がっても将来戻ると考えれば慌てる必要はありません。それに、保有している間は高い配当利回りが得られますから、利回りで下支えされた投資だと言えます。
勿論、ニューシティ・レジデンス投資法人のように破綻してしまえば、リスクは大きくなりますが、破綻し難い仕組みのREITでは、株式投資よりその確率は低くなります。
一方、今日低価格にある銘柄を買えば、将来正常価格に戻った場合には一財産築ける可能性もありますから、投資としての面白みがあります。
こう考えると、今のREITは数十年に一度の投資機会だと見る事も出来ます。

元々、インカムゲイン投資商品であるREITには、大きな投資利益が見込めませんから、普通の状態では株式投資に比べると堅実ですが、妙味は少なくなります。
それが投資口価格の下落によって、インカムゲインとキャピタルゲインの両方が狙える状態になったことで、個人投資家の流れが変わったのだと考えられます。
投資にリスクは付きものですから、リスクに比べてどの程度のリターンがあるかが投資判断のポイントになりますので、今の個人投資家の行動は合理的だとも言えなくはありません。
このような個人の投資行動の変化のせいかは定かではありませんが、フィナンシャルプランナー向けのJREITセミナーの依頼が来ており、2月に実施する予定になっていますので、このセミナーではこういう流れに沿った内容にしたいと考えています。

また、REITの銘柄側もこの流れを捉えて積極的にアピール活動を行う必要があります。
今投資家が知りたいことは、どういうリスクがどの程度あるのかであり、そして存続可能性が判断できれば投資すると考えられますから、こういう事に焦点を合わせたアピールをすることで個人投資家を惹きつける事が出来ます。
昨年末の金融庁等の政策により、REITのリファイナンスについてはセーフティーネットが作られましたが、これで一息付いているだけの資産運用会社は無能です。
今年は銘柄側の自助努力が問われますので、こういう苦しい時期に投資家に対して積極的アピールするような銘柄こそが、実は本当のREITだと言えますので、個人投資家の皆さんには、こういう視点で今年のREITを見ることをお勧め致します。

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