2010年04月19日

国力に依存するREIT/REITアナリスト 山崎成人


 その仕組みから見ると、REITの収益及び成長性は国内の不動産市場に依存しています。
配当金は賃料収入が源泉ですから、賃料上昇か稼働率上昇が配当金増の鍵となりますが、日本の賃料制度では急激な賃料上昇は抑制されていますから、インフレや賃貸コストが大きく上昇する等の理由がないと実現は難しくなります。
又、成長性は不動産市場の拡大によって可能となりますが、オフィスビル市場(東京)は既に量的飽和状態になっていますので、これ以上の拡大は外資系企業の進出ラッシュによってテナント需要が拡大しなければ叶いません。
商業施設は、かつて外資系ブランドの進出によって賃料高騰の恩恵と、商業施設の増加を促しましたが、これは既に峠を越えました。
このように見ると、日本のオフィスビル市場は、外資系企業の誘致が活発化しないと賃料上昇も成長も見込めません。
商業施設(物流倉庫・ホテルも含む)は、最終的には個人消費に依存していますから経済成長が鍵になっていますが、日本の経済成長は止まっていますので、アジアの観光客を誘致する等して日本国内での消費を増やしてもらうしかありません。
唯一国内需要で完結しているのは賃貸住宅市場ですが、賃貸マンションの賃料は保守的な設定になりますから、将来の賃料上昇を見込める市場ではありません。
但し、賃貸マンション市場は、必ずしも経済成長が恩恵をもたらす市場ではなく、低成長下では所有マインドの低下によって、相対的に賃貸需要が増加するので、低成長下でも市場は縮小しません。

このように考えると、REITの現状は、日本の現状をそのまま反映しています。
オフィスビルと商業施設市場を活性化するには、最早国内需要だけに頼らずに、海外需要に活路に開いていくしか途がありません。
そして、賃貸住宅市場は、家計の考え方を変えていく事で活性化します。
住宅の所有意欲向上は、分譲市場の活性化を促しますが、その反対側には、住宅ローン利用による将来の個人所得の先食いが含まれます。
個人所得が増えない状態で、将来の所得を先食いするような一時的な消費行動は、個人消費を低迷させる原因になります。
かつて1960年代頃から、不動産をストックと考えるようになって、負債があっても資産を保有するので家計のB/Sは保てるという考え方が普及し、購入意欲を刺激しましたが、今日検証してみると、この考え方が通用したのは都内の不動産だけです。
元々一般的庶民がストックに頼るような家計を構築することは無理なのですが、一億総中流という幻想下で、このような消費行動が促進されました。
今日では、個人はストックを前提とした家計から離れて、フローに依存した家計にシフトすることが合理的なのですが、この考え方はなかなか普及しません。

このような海外との関係やストックからフローへの転換は、日本が抱えている問題とシンクロしていますが、国内は鈍感なままです。
政治も羅針盤のない状態で右顧左眄していて、その目的は党勢拡大だけになり下がっています。
この日本の現状が海外からどのように見られるのかを考えると背筋が寒くなります。
今のところは過去の遺産が利いていて、見捨てられる状態ではありませんが、このまま10年も続けば、国力の衰退は止められなくなるのではと思います。



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