2010年10月15日

オフィスビルの需要は?/REITアナリスト 山崎成人


 オフィスビル市場の状況は依然として厳しさが続き、この様子では2011年も低迷するのではと思われます。REITの決算情報を見ても、稼働率・賃料水準とも下落が目に付き、未だ底だとは言えません。
また、このオフィスビル市場の低迷を、単に循環変動と捉えるのは市場を読み間違えてしまう可能性があります。
オフィスビルのテナント需要を左右する事業所数と従業員数は、1996年をピークとして減少の一途をたどっていますし、完全失業率も悪化していますので、数字で見る限りオフィスビル需要が高まる要素がありません。
テナントである企業の方も固定費の削減に取り組んでいて、事務所賃料に対しても供給側がリードしている賃料相場ではなく、支払能力のよる相当賃料を求める傾向があります。
大手町・丸の内地区のAクラスビルの新規成約賃料が4万円/月/坪を切ったとの例もあるようですが、企業の損益分岐点分析では3.5万円/月/坪が限度だとも思えますから、この数字に向けて賃料水準が調整される方向に向いているようです。
テナントにとって賃料水準が抑えられるのは朗報ですが、長期的に見ると、この賃料水準ではオフィスビル経営が成り立たなくなります。
例え簿価の低い土地であっても、必要なスペックを盛り込んだ建築費は高くなりますから、建物費用の回収も長期化して賃貸収支がバランスしません。
これでは、一般事業会社がオフィスビル経営を展開する必然性がなくなります。
また、現在の金利は底に達していますが、長期的に見れば、日本の金利は上昇しますから、借入金で賄うオフィスビル経営の将来はより厳しくなります。

このように考えると、オフィスビル経営はキャッシュ・フローだけで見るREITに優位性があります。
現在、貸ビル業を展開している一般事業会社は借入金の多さに苦労していますが、REITはその仕組み上、一定の借入金によってレバレッジを掛けるので、LTV(有利子負債比率)が40%台前半であれば、特に問題とはされません。
また、順調なREITであれば定期的にエクイティ調達を行いますから、一般企業のように借入金総額を問題視されることも少なくなります。
こういう事業環境では、極論すると、オフィスビルはREITしか経営できない状態になるとも言えます。
REITはポートフォリオNOI利回りが5.5%/年あれば、十分に配当が可能ですから、個々のビルの利回りには自由度がありますし、投資家に対してもポートフォリオの説明で事足ります。
一方、一般事業会社では投資の一環として賃貸事業収支の黒字化が超長期になるような事業の合理性の説明が難しいですから、客観的に見れば、オフィスビル経営からは徐々に遠ざかるとも思えます。
このような状態が続けば、日本も米国並みにREITの保有ビルが増える方向に進むかもしれません。それはそれで必ずしも悪い事ではありませんから、そういう時代が来るかも知れないという前提でオフィスビル市場を見る必要もありそうです。


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