2014年10月17日

日本ヘルスケア投資法人の上場/アイビー総研 関 大介

 今回は、J-REITでは初のヘルスケアREITとなる日本ヘルスケア投資法人(証券コード3308、以下NHI)について記載します。

ヘルスケアREITとは、主として有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅などのシニア向け住宅及び病院やメディカル・モールななどの医療施設を主要な投資対象とするREITのことです。
NHIの運用を行う資産運用会社は大和証券をスポンサーとしていますが、加えてヘルスケア分野での豊富な投資実績を持つAIPジャパンをアドバイザーとして採用し運用のサポートを受ける予定です。
NHIは上場前に取得済の8棟と上場時取得の6棟を併せ、ポートフォリオは14棟、取得額133億円程度(図表)で上場銘柄としての運用を開始します。
上場時の14棟は全て有料老人ホームとなっています。
前述の通り、ヘルスケア用途でも細分化すると様々な用途の不動産があります。NHIのポートフォリオ方針でも高齢者向け住宅を60%以上、医療施設を40%以下、その他の施設を10%以下という投資割合を示していますが、当面は高齢者向け住宅の取得を中心に行う方針を示しています。

初のヘルスケアREITになったということもありますが、NHIの情報開示が詳細に及んでいる点は評価すべき点だと考えられます。
NHIは、上場時の目論見書による情報開示でヘルスケア資産への投資リスクを軽減していることが明確になっているためです。
ヘルスケア資産の場合、不動産を保有するREITは運営会社に一括して賃貸し、実際の入居者などへのサービスは運営会社が行います。そのため、ヘルスケア資産は、賃料変動リスクやテナント退去(破綻)リスクが高い用途となっています。
NHIは、賃料変動リスクに関しては、大半の物件で長期固定の賃料契約とすることで回避する方針です。また、テナント退去リスクについては14棟を7社の運営会社に委託し、テナント集中リスクを軽減することと併せ、テナント退去時には他の運営会社に当該物件の運営委託を協議できることとしています。

次に有料老人ホームなどのシニア住宅は、介護保険のサービスを受ける入居者が大半を占めるため、介護保険制度変更の影響を受けやすいというリスクを持つ用途です。このリスクに対し、NHIは取得施設の売上に占める介護サービスの売上割合が50%程度ということを示すことで、保有物件は制度変更の影響が比較的少ないということを示しています。
具体的には、一人の入居者当たり売上が月額30万円あった場合、賃料部分が15万円と介護サービス部分が15万円という内訳になります。現在の介護保険では、利用者負担は1割となっていますので、入居者が実際に払う金額は16万5,000円(家賃15万円+介護サービス15万円×10%)となります。
介護保険の利用者負担割合が現行の1割から2割となったとしても、入居者の介護サービスに伴う負担は1万5,000円増加するだけという見方もできるのです。

このようにNHIの情報開示は充実しているため、投資対象として検討できる銘柄と言えそうです。また、ポートフォリオの利回りは鑑定ベースで7%程度と高い点も投資する上でのメリットとなりそうです。

一方でNHIに投資する上での注意点として、前述のシニア住宅が持つリスクに加えて、利益超過分配と資産規模拡大が難しいことが指摘できます。
まず利益超過分配ですが、NHIは減価償却費の40%程度を利益超過分配として分配する方針です。このため、利益ベースでの分配金と利益超過分配による分配金の内訳を確認することが重要になります。目論見書に記載されている月額2,300万円の減価償却費を基に計算すると、通常期(6ヶ月)ベースで1口当たり900円程度は利益超過分配となりそうです。
また、シニア住宅は人口減少が明確な日本で数少ない需要が高くなる不動産用途と言えますが、介護職員の問題は未だ解決されていません。シニア住宅の運営会社は、職員の確保ができない限り運営施設規模の拡大は難しい状況になるのです。このため、ヘルスケア銘柄は資産規模の拡大に時間を要する可能性が高いというリスクがあると考えられます。

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