2015年12月18日

12月18日に公表された日銀の金融緩和によるJ-REITへの影響/アイビー総研 関 大介

1.金融緩和補完措置の内容

2015年12月18日に、日銀は2014年10月の追加金融緩和を補完する金融政策を公表した。
J-REITに関する内容は、買入限度額を従来の発行済投資口に対し5%以内から10%以内へと引き上げすることとなった。
2015年春頃から、従来の5%枠内では年内にも投資対象となる銘柄が枯渇する可能性が指摘されていた。日銀は2010年12月からAA格相当の銘柄を買入れしてきたためだ。


2. 買入れの効果と価格への影響

今回の緩和措置によって、AA格の銘柄だけとしても長期でJ-REIT買入れが可能となった。
具体的には、本稿執筆時点で日銀が買入対象とする格付けがAA格以上の銘柄は29銘柄(図表)となっている(※1)。
既にAA格の銘柄全てを5%買入れ済(※2)であったとしても、今回の緩和措置でさらに5%買入れが可能となるため、17日の終値ベースでみれば、図表1の通り4,130億円程度買入れ枠が拡大したことになる。
J-REITの投資口価格が下落すればこの買入れ枠は縮小することになるが、現在の年間900億円の買入れペースが続くとすれば、4年以上はAA格銘柄の投資が可能となった。
つまり2015年春頃に懸念されたような、日銀はJ-REIT買入れ枠があっても実質的に買入れが不可能になる懸念は当面生じないことになる。

また投資口価格への影響は、特に時価総額の大きい銘柄にはプラスに働くことになりそうだ。それらの銘柄は、従来の5%枠上限まで日銀の買入れが実施されている可能性が高いと見られていたためだ。
実際に、18日は、時価総額が最も大きい日本ビルファンド投資法人(証券コード8951)の価格上昇率が最も大きく(4%)、東証REIT指数の上昇率1.5%を上回った。
時価総額の大きい銘柄の中には、米国利上げの影響により外国人投資家の売り圧力が掛りやすい外資系の銘柄である日本プロロジスリート投資法人(証券コード3283)やGLP投資法人(証券コード3281)のように、18日に下落している銘柄もある。
しかし18日の上昇率が東証REIT指数に達していなかったユナイテッド・アーバン投資法人(証券コード8960)などのAA格であり時価総額が大きい銘柄は、出遅れ感から今後の価格上昇余地がありそうだ。


3. 持続的な価格上昇のための条件

今回の金融緩和は、冒頭にも記載した通り「補完」措置であり、第3弾の金融緩和と言える規模に達していないものと筆者は考えている。スマートフォンの新しい機種の命名方法に習えば「日銀金融緩和2S」といったマイナーチェンジと言えよう。
J-REITに関しても年額900億円の買入れ枠の拡大は行われていない。つまり従来の状況が続くことが確認されただけとも見えるのだ。
但し、国債買入れ年限を長期化することも公表されているため、10年国債利回りが0.3%程度を上限として過去最低の0.2%を切る可能性がある。
このような状況になればJ-REIT価格は持続的な上昇局面になりそうだ。
この場合には、東証REIT指数は2,000ポイントを目指した動きになることも想定できる。

更に、日銀は買入れ枠の拡大は行っていないが、投資口の5%を超える規模まで買入れを行うことで、大量保有報告の提出義務が発生することになったと考えられる(※3)。
J-REITの買入れを継続するためにやむを得ない措置であったが、日銀がこの段階まで踏み込んだという点が市場に浸透すれば、投資口価格上昇の要因となりそうだ。

※1: AA格以上という条件の他に、売買日数が200日以上あり、年間売買金額が200億円以上となっている銘柄が買入対象。
※2: 実際には※1の条件もあるため、上場後の経過日数が少ない積水ハウス・リート投資法人(証券コード3309)などの投資は、これから実施されるものと考えられる。
※3: 株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令第11条3項には「日本銀行」の記載がある。

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