2016年05月27日

大和ハウス・レジデンシャル投資法人と大和ハウスリート投資法人の合併による収益への影響とデメリット/アイビー総研 関 大介

 今回は、前回のコラムの「合併メリット」に引き続き、大和ハウス・レジデンシャル投資法人(大和レジ)と大和ハウスリート投資法人(大和リート)の合併により9月に誕生する大和ハウスリート投資法人(新大和リート)関して収益への影響とデメリットについて記載します。


1. 合併による収益への影響

まず収益への影響は、1口当たり分配金は合併関連費用がなくなる2017年8月期に4,700円を公表しています(※1)。
この金額は、合併前の当期(2016年8月期)予想と比較すると、大和レジは4.2%、大和リート14.9%とそれぞれ増加します。
つまりこの合併は、既存投資家から見れば増配を伴うものとなります。
このように増配となる要因は、合併後に6物件を172億円で取得する効果が1口当たり196円、資産運用報酬などのコスト削減効果が1口当たり236円としています(※2)。コスト削減という合併のシナジー効果が、合併前と比較して増配となる大きな要因となっています。

また合併に伴い発生する「のれん償却額」は毎期11億円程度となります(※1)が、同額を大和レジがニューシティ・レジデンス投資法人と合併した際に生じた内部留保180億円弱を取り崩して分配する方針です。
のれんが発生する最初の合併となった野村不動産マスターファンド投資法人(NMF)は、のれん償却額を一時差異等調整引当金に計上して分配する方針ですが、新大和リートは内部留保があるため、優先的に取崩しを行う必要があるとのことです。
従って新大和リートは、内部留保の取崩しだけで7年以上はのれん償却額に対する充当を行うことができますが、その後はNMFと同様に一時差異等調整引当金を計上して分配金への影響を回避するものと考えられます。

なお、内部留保の取崩しは、のれん償却額と同程度を維持する方針を示しています(※2)。
従って収益が増加すれば、そのまま分配金は増えることになります。


2. 合併によるデメリット

次に合併のデメリットは、合併により新大和リートが大和リートの保有物件を鑑定価格で取得し、大和リートの含み益330億円弱が消滅する点が大きいと、筆者は考えています。
現在の鑑定は、リーマンショックのファンドバブル期を下回るキャップレート(※3)で評価しています。現在の異常な低金利政策が正常化すればキャップレートは上昇(不動産評価額は低下)することになりますので、大和リートの物件が将来は含み損失に転じるリスクが高くなったと考えられるためです。

また新大和リートは、合併によりオフィスやホテルを投資対象とする総合型で運用を行う方針です。大和レジは賃貸住宅、大和リートは長期固定契約の物流施設が中心と、両投資法人ともに収益の安定性が高い用途を投資対象としていました。
当面はポートフォリオに占めるオフィスやホテルの割合が高くなることはないと考えられますが、今後は収益の変動リスクにも留意する必要性がありそうです。


※1: 2016年4月18日付「大和ハウス・レジデンシャル投資法人大和ハウスリート投資法人合併説明会資料」に拠る。
※2:「2016年4月18日開催合併説明会主な質疑応答(要約)」に拠る。
※3: 不動産鑑定評価で使用される「還元利回り」のこと。想定収益をキャップレートで除することで不動産評価額を算出する直接還元法で用いられる。実質的に当該物件の期待利回りとも言える。

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