2024年09月13日

三井不動産ロジスティクスパーク投資法人の合併について(2)/アイビー総研 関 大介

前号では、三井不動産ロジスティクスパーク投資法人(MFLP)とアドバンス・ロジスティクス投資法人(ADL)の合併に関して、その概要と合併の効果の一部について記載した。
今回は、銘柄側が合併説明会資料で記載している、その他の合併効果と投資の上での注意点について記載する。


1. 資産規模拡大の効果と注意点

まず、銘柄側は効果について、最初に「資産規模拡大によるマーケットプレゼンスの向上」を記載している。合併後の資産規模は5,765億円となり、2024年8月末時点の日本プロロジスリート投資法人(3283)の9,168億円、GLP投資法人(3281)の8,919億円に次ぐ規模となる。併せて時価総額も拡大するため投資口の流動性も増すことになる。
一方で注意点としては、合併による規模及び時価総額の拡大が必ずしも投資家に評価されるものではないことだ。例えば、直近で合併したKDX不動産投資法人(8972)は、9月10日時点で時価総額が6,300億円を超え、市場で7番目の規模となっているが、分配金利回りは5%を超えている。市場平均の利回りが4.72%という点と比較すると、規模拡大イコール投資家評価の向上とはなっていない。


2. ダブルスポンサー体制

上記に加え、銘柄側は本合併効果としてポートフォリオ分散効果とダブルスポンサー体制を挙げている。ポートフォリオ分散効果については前回記載しているため、ダブルスポンサー体制になった効果について記載していく。

本合併では、運用会社の株主が三井不動産単独から伊藤忠商事グループが加わるかたちとなった。デベロッパーと総合商社という点では、重複する点が少なく補完性が強いため合併の効果としては大きいと考えられる。
特に伊藤忠商事グループは、食品やアパレルメーカーなどの会社を傘下に抱え、これらの業態は今後ネット通販などの対応をより強化する可能性が高い。つまり、物流施設のテナント層となる会社が多い点はメリットと考えられる。一方で、これは将来的に期待できるということであり、短期的にメリットが顕在化する可能性は低いことには注意が必要だ。


3. 借入金比率(LTV)の低下

更に本合併効果としては記載していないが、今後の成長戦略として合併後にLTVが低下するため、借入金を活用した物件取得余力が大きくなった点を記載している。本合併公表時点でのLTVはMFLPが40.5%(2025年1月期予想)、ADLが44.2%(2025年2月期予想)となっていたが、本合併時に3物件を追加取得しても、なおLTVは39.9%に低下するとしている。
これは、ADLの保有物件をMFLPが鑑定価格で取得するためだ。具体的にはADLの取得価格1,392億円のポートフォリオを鑑定価格の1,660億円で取得するが、ADLの借入金額はそのまま継承するため、総資産側が大きくなり、結果としてLTVが低下する。
一方で合併後のポートフォリオ5,765億円のうち、1,660億円を現状の市況で取得した点には注意が必要だ。合併時に取得する3物件合計107億円を併せると合併後のポートフォリオのうち30%超を2024年11月に取得することになる。
物流施設への投資家の需要は高く、短期的に物流施設の不動産価格が下落する可能性は低い。但し、将来的に不動産価格が下落に転じた場合、不動産価格がピークに近い本合併時に取得した物件の鑑定評価額が下落し、含み損に転じる物件が多くなるリスクがある点には注意が必要と考えられる。


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