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「REITキーマンに聞く!」 さくら不動産投資顧問株式会社 投資運用部長 田口 嘉邦氏
今回は、さくら不動産投資顧問株式会社 投資運用部長 田口 嘉邦氏に業界動向やファンドの特徴に関してインタビュー形式でお話していただきました。
――さくら総合リート投資法人の強み、特色をお話し下さい。
弊投資法人は、2016年9月に18物件・約573億円のポートフォリオにてJリートにて上場致しました。主要物件としましては、オフィスとしては東京都新宿区所在の「成信ビル」、商業施設としては、大阪府岸和田市所在の「ラパーク岸和田」等が挙げられ、GJTのポートフォリオを概ね引き継いで上場しています。オフィス及び商業施設が、各々全体ポートフォリオの約4割を構成しており、これに住宅や工場などがミックスされた総合型のポートフォリオとなっています。
今後については、ミドルグレードオフィスへの投資を中心に据えつつも、戦略的な資産入替、投資対象を総合型としていることを生かした様々なセクターの物件の組入等を通じて収益性の向上、安定化を目指していく方針です。
――現状のポートフォリオはオフィスと商業施設で8割以上を占めていますが、今後の物件取得ではどちらを優先したいとお考えでしょうか。
現状、そして近い未来の賃貸需給を勘案すると軸足はオフィスの方になると考えています。
商業施設に関しては、前述のとおり、精緻なマーケット分析を十分に行った上で、投資採算性を有する物件、特に生活密着型商業施設(ネイバーフッドリテール)を中心に投資していきますので、自ずとオフィスへの投資額よりも小さくなっていく見込みです。
ポートフォリオ全体の構成としては、今後5年程度でオフィス4割、商業施設3割、住宅、ホテル及び物流施設といったその他資産3割という大まかなイメージを持っています。
――オフィスについては全体として取得環境が過熱しているというお話を伺いましたが、そのような状況下、どのような取得戦略をお考えでしょうか。
まず、弊投資法人のポートフォリオに組み入れているオフィス物件同様、引き続き「ミドルグレードオフィスビル」に集中的に投資していく予定です。
と申しますのも、ミドルグレードオフィスビル、所謂Bグレードオフィスビルといわれるオフィスビルは、大規模なSグレードオフィスビル及びAグレードオフィスビルと比較して相対的に賃料水準が安定している他、かつ主要なテナント層となる中小企業の絶対数の多さに加えて、賃貸面積の供給量が限定的といった利点を有していると考えるからです。
また地域という切り口からは、東京都及び神奈川、千葉、埼玉という隣接3県に重点を置きながら、全国の政令指定都市に存する潜在的な取引情報を広範かつ大量に収集し、あらゆるエリアにおける競争力及びテナント訴求力のある物件(近隣エリアにおいて、いわゆる“トップ10”に入るような物件)を丁寧に購入していくことで、ポートフォリオの安定性・収益性の向上に繋げていく考えです。
――オフィス、商業施設以外の資産について取得方針や取組をお聞かせください。
まず、新たな収益性アセットとして、ホテルへの投資を積極的に検討しています。
インバウンド需要は今後も更に底堅く推移していくものと予測されますので、検討するホテル物件の市場性を精緻に分析するとともに、ホテルオペレーターのクレジット、賃貸借契約形態(普通賃貸借契約もしくは定期賃貸借契約の別、契約期間、賃料形態(「固定賃料のみ」、「固定賃料+歩合賃料」もしくは「歩合賃料のみ」の別)等も総合的に勘案した上で、投資採算性を有すると判断できる物件を見つけ出していきたいと考えています。
次に、安定性の高い物流施設(ロジスティクス)も投資対象として前向きに捉えています。Eコマースや3PLの市場拡大を確実に追い風にできるよう、高速道路のインターチェンジ、空港や港湾、並びに最終消費地へのアクセスを重視して投資対象を選定していく考えです。
なお、先般の決算説明会でもご紹介させて頂いたのですが、パイプライン・サポート契約の締結先を通じて総賃貸面積約60,000㎡以上、築浅(2016年竣工)の物流施設で優先交渉権を獲得することができました。
現在取得の検討中ですが、もし当該物流施設を購入することが出来れば、ポートフォリオの質、安定性も大きく向上するものと見込んでいます。