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マーケットコラム

投資法人債について/REITアナリスト 山崎成人

2010-01-29

REITアナリスト 山崎成人


 長らく発行が停止されていた投資法人債が久しぶりに日本ビルファンド投資法人から起債されました。
100億円、期間5年、1.23%の第11回投資法人債ですが、これ以前のREITの起債は、昨年2月に日本リテールファンド投資法人がスポンサーの三菱商事に割当てた劣後投資法人債がありますが、公募起債は日本プライムリアルティ投資法人が2008年5月に行った30億円、期間3年、1.7%です。
REITにとって投資法人債は有力な資金調達手段ですが、社債市場の受け入れ態勢が十分ではなく、起債が難しくなっていました。
その理由としては、REITが資金調達難に陥っていて、償還原資の確保が難しくなっていることが挙げられます。
REITの資金調達難は、程度の差こそあれすべての銘柄に及んでいますので、社債市場が過敏になるのは止むをえませんが、一般事業会社の社債に比べれば相対的リスクが小さいことはニューシティ・レジデンス投資法人の民事再生計画(負債の100%返済)を見れば明らかです。
又、REITが社債を発行する理由は、
① 配当利回りにレバレッジを効かせるため
② 保有資産(固定資産)を長期負債で賄うため
③ 営業収益が安定しているので、支払利息も極力固定したいため
等が挙げられます。

一方、社債市場から見れば、REITには内部留保がなく償還原資の手当が見えないという不安があります。
日本ビルファンド投資法人の例でみても、減価償却費見合いの手持現預金は直近決算期で380億円ありますが、流動比率が40.17%、現預金比率は39%と低く、財務面での償還原資は見えてきません。
日本ビルファンド投資法人がこのような財務構造を持っているのは、デットは金融機関からの借入を主としている為で、投資法人債は補完的な位置付けになっているからだと考えられます。
仮に、投資法人債を重視していれば、もっと保守的な財務構造を構築しているはずです。

REITが投資家の為の仕組みだと考えれば、本来はエクイティとボンドの投資家に向くという考え方もあるはずです。
REITがそのような考え方で運用してきているのであれば、必要があれば日本政策投資銀行が投資法人債の償還原資を融資するという考え方も理屈に合います。
このように考えると、REITの財務戦略をもう一度根本から考え直す必要がありそうです。
政策当局も、REITの支援策を緊急避難的に考えるのではなく、恒久的な手法としてREITの財務戦略の一環になるような対応が必要になるとも思われます。
この問題は私にとっても今年のテーマであり、REITの財務戦略を根本から再検討してみたいと思っています。

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