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マーケットコラム

長期金利の下落とスプレッド/REITアナリスト 山崎成人

2010-08-06

REITアナリスト 山崎成人


 新発10年物長期国債の利回りが1%を切る状態にまで買い進まれましたが、今のところ国債の独歩高という状況です。
スプレッドという考え方では、国債の利回りが下がれば他の投資商品も連動して上昇することになりますが、果たしてそのような動きになるのかは定かではありません。
特にREITのようなインカム型投資商品は国債利回りの影響を受けるはずですが、現実はそうではなさそうです。

REITの市場取引を見ていると分かりますが、市場で売買できる有価証券は、その証券の裏付けになっている資産価値の変動から離れて、リターンとリスクをコントロールする事が出来ます。
REITの資産価値は保有不動産の価値に由来していると考えられますが、この価値は不動産市場の取引動向によって変化します。
但し、この価値の変動は短期ではなく中長期でしか変動しませんので、次のような考え方で市場取引をすれば有価証券取引ならではの手法が存在します。

① 中期的に見て裏付け資産の価値が急落する可能性が小さいこと
② 裏付け資産の価値に市場が敏感になっていること

という前提があれば、有価証券を短期売買することでリターンが得られるのと、リスクも裏付け資産の価値とは関係なく売買によってコントロールする事が可能です。

恐らく、国債もこれと同じ考え方で取引され始めているのではないかと考えられます。
日本の国債には財政リスクが存在しますが、これは長期的なリスクであって直ちに下落する可能性は小さいのと、政府が根本的な対応が出来ない状態であれば、一定レンジでセンシティブに動くと考えられます。
こういう状況であれば、短期売買によって投資を成立させる条件が揃いますから、投資ファンド等にとっては絶好の機会になります。
客観的に見れば、日本国債の利回りは、暫くは1.0%~1.5%弱/年のレンジで動くと予想され、最大リスクでも0.5%弱の利回り低下なので、元本に換算すれば30%程度の下落リスクです。
従って、短期売買を行えば、リスクを10%以下に抑えられますから、十分に投資としては成立します。
昔、「チューリッヒの小鬼」と称された投資家がいましたが、今ではこのような投資家が市場を席巻しているのではないかと思います。

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