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マーケットコラム

高利回り銘柄投資の妙味と注意点 その1/アイビー総研 関 大介

2017-06-09

関 大介

 J-REIT価格は、上昇基調の株式市場とは異なり、停滞した状況が続いています。東証REIT指数は6月に入り7日まで1,750ポイントを超える水準で推移していますが、昨年末と比較すると5%程度低くなっています。日経平均株価が同期間で4%を超える上昇となっていることと比較すると、J-REIT価格の出遅れ感が目立つかたちになっています。
一方で価格下落に伴い、J-REIT全体の利回りは昨年末の3.53%から7日には3.85%まで上昇しています。
個別銘柄に目を転じると、全58銘柄のうち15銘柄が5%を超える利回りになっています。株式市場でも配当利回りが高い株式はありますが、5%を超える株式は少ないため、利回りに注目する投資家にとって、J-REIT市場は有力な選択肢と言えるでしょう。


1. 高利回り銘柄の価格推移


特に昨年末からのJ-REIT価格の下落局面では、高利回り銘柄への投資が有効となっていました。
図表は、昨年末時点での高利回り5銘柄と低利回り5銘柄の価格推移を5月末までで比較(※1)したものです。
なお、東証REIT指数ではなく、J-REIT価格の単純合計(単純価格指数)の推移を加えた理由は、東証REIT指数が時価総額を加味して算出された数値となっているためです。
低利回り銘柄は日本ビルファンド投資法人を筆頭に時価総額が大きいため、その影響を除外するため単純価格指数を加えています。

図表の通り、高い利回りの銘柄の価格推移は、J-REIT価格全体が下落する中で堅調に推移しました。昨年末に高利回り5銘柄に投資していれば、2%以上価格が上昇していたことになります。
この要因は、昨年11月中旬から年末にかけてJ-REIT価格が上昇する中で、高利回り銘柄は投資家の需要が低く、高い利回りのままで価格が上昇しなかったことが挙げられます。
しかし、この5銘柄の昨年末時点の単純平均利回りは6.4%でしたので、高い利回りの上に安定的な価格推移が加わり、利回りを重視する投資家にとって有効な投資手段だったと考えられます。


2. 高利回り銘柄の利点

また利回りが高いという点は、長期投資を考慮する上でも重要な要素となります。
例えば6%の利回りがある銘柄を5年間保有するとしましょう。この場合、分配金が変化しなければ3年間保有するとトータルで18%分の分配金収入となります。3年後に価格が10%下落していたとしても、3年間で8%のトータル収益になります。
利回りが3%程度という低利回り銘柄の場合では、売却損失で分配金収益が吹き飛ぶかたちになりますので、高利回り銘柄への投資は、長期投資の場合には妙味がある有力な手法と考えられます。



3. 高利回り銘柄投資の注意点

但し、昨年末からのJ-REIT価格の動向は、徐々に価格水準を切り下げていくというものでした。
高利回り銘柄は、J-REIT価格が急落する時には低利回り銘柄と比較して下落率が大きくなるという傾向がありますので、この点には注意が必要です。
図表でも4月中旬に高利回り銘柄の価格推移が急落していますが、この時は東証REIT指数が4月11日の1,762ポイントから4月14日の1,726ポイントまで50ポイント近く急落した時期となっています。

さらに高利回り銘柄が長期投資で妙味があるためには、あくまでも分配金が同一水準で推移するという前提が成り立つことが重要です。
J-REITは債券とは異なり、分配金が変動する投資商品です。
高利回り銘柄の場合は、賃貸収益の変動以外にも分配金が減少するリスクがあるという注意点があります。
この点については、次回記載する予定です。
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※1: 2016年12月末時点で上場後の第2期となっていない銘柄を除く。
具体的な銘柄(括弧内は証券コード)は以下の通り。

<高利回り銘柄>
・インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(3298)
・スターアジア不動産投資法人(3468)
・トーセイ・リート投資法人(3451)
・サムティ・レジデンシャル投資法人(3459)
・大江戸温泉リート投資法人(3472)

<低利回り銘柄>
・日本ビルファンド投資法人(8951)
・ジャパンリアルエステイト投資法人(8952)
・日本プライムリアルティ投資法人(8955)
・アドバンス・レジデンス投資法人(3269)
・大和ハウスリート投資法人(8984)



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<セミナーのご案内>

日本取引所グループ主催で6月29日(木)に東証で開催するセミナーで、筆者が講師を行います。
http://www.jpx.co.jp/learning/seminar-events/seminar/detail/d1/20170629.html

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