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マーケットコラム

2018年上半期のREIT投資家動向/アイビー総研 関 大介

2018-08-17

関 大介

1. 外国人投資家頼みの上半期

2018年上半期(1月~6月)の部門別差引売買金額は、政策的に買い主体となっている日銀を除外すると、外国人投資家の買越し姿勢が際立つ結果となった。
「図表1」は、差引売買金額を対象期間の月平均値にしたものとなっているが、2018年は外国人投資家の買越額287億円が突出したかたちになっている。

またこれまでの実績値と比較しても、外国人投資家の2018年の買越額が大きくなっているが、この点については対象期間が2018年は6月末時点となっていることも影響している。
例えば2016年の月平均買越額は140億円となっているが、上半期だけを切り出すと月平均で373億円の買越額となっていた。
2016年は、2月に外国人投資家の買越額が1,000億円を超える(1,167億円)など、2月から4月に大幅な買越基調が続いた。
この点が、外国人投資家が2016年上半期に買越額が大きくなった要因であった。

2016年は1月末に日銀がマイナス金利政策を公表するなど、外国人投資家の投資家が拡大する要因が生じていた。
一方で2018年は、米国を中心に金利上昇局面となる中で、日本だけが低金利政策を続けるという「追い風」はあるが、それ以外に明確な買い材料は存在していない。
このような状況下で外国人投資家は5月に80億円の売越しとなったが、6月に635億円の買越額となるなど、200億円以上の買越額が続けている。

外国人投資家のJ-REITに対する見方が変わったのか、従来の外国人投資家とは異なる投資家層の参加が増えているのかは現時点では明確なるデータが存在しない。
従って投資家としては、外国人投資家が売越主体になる懸念を持つ必要がありそうだ。


2. 投資信託の売越額が再度拡大基調へ

2018年上半期の投資家動向から見て、今後の価格動向に与える懸念材料として、投資信託の売越額の動向が挙げられる。
図表1の通り、2018年は最大の売越額となっている。
但し、外国人投資家の動向と同様に2016年の上半期だけを切り出すと、投資信託は月平均で195億円の売越しになっていた。
2016年の上半期は、投資信託の大幅な売越しを外国人投資家の買越しで吸収しながらJ-REIT価格が上昇していったという点では、2018年も同様の傾向を示していると言えるだろう。

しかし減少傾向になると見られていた投資信託の売越額が、5月から拡大基調になっている点は、J-REIT価格に先行きに対して懸念材料と考えられる。
2017年にJ-REIT価格が下落した最大の要因となった投資信託の売越額は「図表2」の通り、2018年3月、4月と一時減少したが5月から高い水準に戻っている。
外国人投資家の買越しが続かなければ、2017年と同様に投資信託の売越しを要因としてJ-REIT価格が下落する可能性があると考えられる。

更に懸念材料として、日銀が7月末に公表した金融政策決定会合による政策変更の影響も考慮すべきと考えている。
J-REIT価格は7月末に反騰し、短期的には日銀政策変更を織込んだとも見える。
筆者も2018年中の影響は少ないと見ているが、2019年以降のJ-REIT価格や分配金への影響を与える要素もあると考えている。
この点については、次回の連載で記載する予定。

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