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マーケットコラム

日本リート投資法人について/アイビー総研 関 大介

2014-05-02

関 大介

 今回は、4月24日に上場した日本リート投資法人(証券コード3296、以下NRIC)について記載します。NRICは総合商社の双日(証券コード2768)をメインスポンサー(資産運用会社の株式保有比率67%)とし、外資系のアセットマネジメント会社2社がサブスポンサーとなっています。
投資方針上の用途は、オフィスを主体に住居、商業施設にも投資を行う総合型ですが、上場時はオフィスと住居を保有する複合型でのスタート(図表)となりました。

NRICが公表した業績予想(※1)に拠れば、1口当たり分配金は、上場期にあたるため変則決算期間となる2014年6月期に666円、通常の6か月決算となる2014年12月期は7,062円となっています。上場後の価格推移は、上場時の公募価格252,000円に対し初値262,000円、4月30日の終値266,000円と順調なスタートとなりました。通常の6か月決算となる2014年12月の分配金を基に利回りを計算すると5.3%(7,062円×2÷266,000)となります。
但し、2014年12月期の業績予想では上場に伴い取得した527億円の不動産に関する固定資産税や都市計画税が費用化されていないことや内部留保3,000万円を取崩して分配する予定であることには留意が必要です。
まず固都税の影響ですが、業績予想に記載された固都税の取得原価算入額は252日分で1億5,400万円となっていますので、年額換算で2億2,300万円程度(1億5,400万円÷252日×365日)、6か月換算にした分配金への影響額は734円程度(1億5,400万円÷252日×365日÷2÷151,810口)となります。
次に内部留保の影響ですが、業績予想に開示されている1口当たり当期純利益は6,861円となっていますので、分配金との差額201円が影響する額となります。なおNRICが内部留保を持っている理由は、2011年3月に4物件を取得し運用を開始していたことで当期純利益が積み重なったためです。
2014年12月期に固都税が費用化され内部留保の取崩がなかった場合の分配金は、6,127円(7,062円-734円-201円)となり、この金額がいわゆる巡航分配金に相当します。4月30日の終値で分配金利回りを見ると巡航分配金でも4.6%と高い水準です。従って現状価格水準では投資妙味がある状態と考えられます。

一方で、より慎重に投資妙味を検証したい場合には、次回の増資で巡航分配金水準が維持できることが確認できてからの方が適切となりそうです。その理由として取得額に対する借入金比率が55%程度(※2)と他銘柄と比較すると高い水準になっていることが挙げられます。NRICが資産規模を拡大するためには、比較的早い段階での増資が必要と考えられるのです。
価格は前述の通り順調に推移していますので、プレミアム増資(1口当たり出資額を上回る価格での増資)が可能な状態です。この面では、分配金を増加させる増資が可能です。但し、増資に伴い取得する物件の利回りが、上場時ポートフォリオを下回る水準になると、分配金が減少する可能性もあります。NRICの投資用途は、取得競合が激しく物件の取得利回りが低下していますので、上場後最初の増資が分配金を成長させるものとなれば、長期的な投資を行う判断材料としてプラスと考えられるのです。


※1:NRIC、2014年4月24日付「平成26年6月期及び平成26年12月期の運用状況の予想に関するお知らせ」
※2:NRICの財務方針上では借入金比率の上限は60%を目処としている。ここでの借入金比率は資産増額に対する借入金の割合になっており、2014年12月期末時点では47.2%になる見込みとNRICは業績予想で示しているため、物件の取得余地が財務方針上ではあることになる。

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